願うは君が幸せなこと

———


各部署の代表者が集まる合同会議というものが、数ヶ月に一度開催される。
今日は朝から準備に追われていて、もうすぐその会議が始まる時間だ。

「瀬名、そろそろ行くぞ」

「は、はい!」

部長に声をかけられて慌てて立ち上がった。
胸ポケットにボールペンが二本刺さっているのを確認して、手には書類をしっかり持って。
緊張をほぐすように深呼吸を一回。

重役以外が参加する会議の中では一番大規模な会議で、参加するのは今回が初めてだった。
部長の横で書記のようなことをするだけだが、独特の空気感があるという噂なので少し緊張している。

ちなみに前回は夏美が参加していて、噂話をしてきたのももちろん夏美だ。

エレベーターの二十五階のボタンを初めて押した。
小さな会議室は下の方の階にもいくつもあるが、今回の会議では一番大きな会議室を使うらしい。

二十五階よりさらに上には何があるのか、私はよく知らない。というより、特別な社員以外は立ち入ることを許されていない。

先輩から聞いた話では、最上階は社長のプライベートルームになっているらしいけれど、本当かどうかはわからない。
他にもビリヤード場があるとかカラオケがあるとか、いやいやスイートルームのような客室が用意されているんだとか、様々な予測が飛び交っているのだ。

「部長、合同会議って具体的にはどんなことを話し合うんでしょうか」

「ん?ああ、来年度の予算の振り分けとかな。あとは部署内で通った企画とか提案の最終選考したり、……まあ色々だ」

「その色々が気になるんですが……」

「出ればわかる!」

豪快に笑う部長を見ていると、ちょっとだけ緊張が解けたような気がした。


< 106 / 152 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop