願うは君が幸せなこと
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各部署の代表者が集まる合同会議というものが、数ヶ月に一度開催される。
今日は朝から準備に追われていて、もうすぐその会議が始まる時間だ。
「瀬名、そろそろ行くぞ」
「は、はい!」
部長に声をかけられて慌てて立ち上がった。
胸ポケットにボールペンが二本刺さっているのを確認して、手には書類をしっかり持って。
緊張をほぐすように深呼吸を一回。
重役以外が参加する会議の中では一番大規模な会議で、参加するのは今回が初めてだった。
部長の横で書記のようなことをするだけだが、独特の空気感があるという噂なので少し緊張している。
ちなみに前回は夏美が参加していて、噂話をしてきたのももちろん夏美だ。
エレベーターの二十五階のボタンを初めて押した。
小さな会議室は下の方の階にもいくつもあるが、今回の会議では一番大きな会議室を使うらしい。
二十五階よりさらに上には何があるのか、私はよく知らない。というより、特別な社員以外は立ち入ることを許されていない。
先輩から聞いた話では、最上階は社長のプライベートルームになっているらしいけれど、本当かどうかはわからない。
他にもビリヤード場があるとかカラオケがあるとか、いやいやスイートルームのような客室が用意されているんだとか、様々な予測が飛び交っているのだ。
「部長、合同会議って具体的にはどんなことを話し合うんでしょうか」
「ん?ああ、来年度の予算の振り分けとかな。あとは部署内で通った企画とか提案の最終選考したり、……まあ色々だ」
「その色々が気になるんですが……」
「出ればわかる!」
豪快に笑う部長を見ていると、ちょっとだけ緊張が解けたような気がした。