願うは君が幸せなこと
会議は比較的スムーズに進行していった。
直接顔を見るのは初めての偉い人達の話から始まり、続いて各部署ごとの中間報告。
我らが営業部長が堂々と声を出す姿に、少し感動してしまった。
月宮さんのほうを見ると、ノートパソコンを開いて何かを打ち込んでいるようだった。
ものすごいスピードで文字を打つ彼にはきっと、ボールペンなんて必要ないんだろうな、と思った。
「そういえば、開発部に入った社員は大丈夫そうか?」
人事部長がそんなことを言った。
それが咲野さんのことだとすぐにわかって、無意識に下唇を噛んだ。
開発部長は少しニヤニヤしながら隣に座る月宮さんの肩を叩き、発言するよう促しているようだ。
月宮さんが立ち上がる瞬間、目が合ったような気がした。だけどそれはほんの一瞬だけで、月宮さんは真っ直ぐ前を向いて口を開いた。
「咲野さんはとても優秀です」
そう言った月宮さんの声は、本当にそう思っていないと出せないような説得力があった。
「顧客の要望に的確に答え、必要とされている以上の実績を残しています。それに加え、我々社員達への気配りも忘れません。女性ならではの細やかさと培ってきた柔軟性は、簡単に習得できるものではありません」
それを聞いた他の部署の社員達は、頷いたり感嘆の声をあげたりして、満足そうにしていた。
上辺だけの笑顔を作りながら、月宮さんの腕を見つめた。
咲野さんが嬉しそうにしがみついていたことを思い出した。