願うは君が幸せなこと
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朝から挨拶以外の言葉を交わさず、黙々とパソコンに向き合う私を、夏美はどう見ていたのだろうか。
探せば仕事はいくらでもある。
創くんの予定を見ながら空いている日に取引先へアポを取ったり、新規開拓出来そうな地域のリサーチをしたり、そろそろ契約更新時期の会社の優先順位を考えたり。
すべてやり終えて手が空くようなら資料室の掃除をしたっていい。
今はただ、他のことを考える時間を極力減らしたかった。
結果、課長には気合入ってるな、と豪快に褒められたし、創くんには僕も見習います!と声をかけられた。
千葉さんには心配そうな目を向けられたけれど、何も聞いてはこないようなのでホッとした。
ただ一人、夏美だけが私を放っておかなかった。
「祐希、今日どうしたの?」
「どうって、仕事してるだけだよ」
「様子がおかしいことに私が気付かないと思ってるの?……昼休み、一緒に外行こう」
そう言って、夏美は営業部を出ていった。
どこか他の部署に用事があるのかもしれない。
その様子をぼーっと眺めてから、はっとして仕事に集中し直す。
少しでも手を休めると、こんな風になってしまうのだ。
まさか自分が、失恋したらこんなにショックを受けると思っていなかった。
多少は落ち込みつつもいつものように仕事をして、そのうち忘れていくんだろうと思っていたのだ、昨日までは。
実際、千葉さんと別れた時はそうだったから。
……それだけ落ち込んでいるということだろうか。
自分が思っているよりずっと、私は悲しんでいるのだろうか。
つまりはそれだけ、好きだったということ。