願うは君が幸せなこと
昼休み、私と夏美は一緒に会社を出た。
近くのカフェでサンドイッチとカフェオレを買って、天気がいいのでテラス席で食べることにした。
案外店内よりここの方が、誰かに話を聞かれる可能性は少ない。
野菜がたくさん挟まっているサンドイッチを一口食べて、椅子にもたれかかってみる。決して座り心地のいい椅子ではないけれど、今はそうしていたかった。
「で、何があったの?」
本気で心配してくれているのが伝わってくるから、夏美にはすべて話そうと決めている。
今思えば夏美がいなかったら、月宮さんと何度も会うことはなかっただろう。
そう考えたらなんだかとても不思議な気持ちになった。
「……失恋した」
「え?」
「だから、失恋したの」
夏美は、一瞬意味がわからないというように眉をひそめた。
それから、驚いたように目を見開いていく。
ストローでカフェオレを飲んでみると、思ったより苦くて顔をしかめた。
だけど今更シロップを取りにいくのも面倒で、そのまま飲むことにする。
夏美はずっと驚いた顔のままだ。
予想通りの反応だ。
好きな人がいるとも言っていなかったし、そもそも私だって最近自分の気持ちに気付いたのだ。
「あ、相手は誰なの?」
やっと口を開いた夏美は、多分カフェオレとサンドイッチの存在を忘れているだろうな、と思った。
「……月宮さん」
「………それ本当?」
「こんな嘘つくわけないでしょ」
いっそのこと嘘なら良かったのに。そう心の中で呟いた。
夏美は、信じられないというように口元に手を当てて、首を左右に振った。