願うは君が幸せなこと

「最初の出会い方は最悪で……。出来ればもう二度と顔を見たくないって思ってたら、その日の夜にレストランでばったり。これだけでもすごいよね」

あの日が、随分と前のことのように感じられる。
レストランで再会した時の、お互いに嫌な顔をし合ったことを思い出すと、くすくすと笑ってしまいそうになる。

「じゃああの日は、祐希の人生の中で一番ってくらい、色々合った日なのね」

夏美がそんな面白いことを言った。

そうだ。あの日は私にとって、忘れられない運命の日だった。
月宮さんを好きになるきっかけの一日であり、また千葉さんと別れるきっかけの一日でもあった。

次に月宮さんに会ったのは、千葉さんと別れ話をしている時。逃げ出したくて仕方なかった私を助け出してくれた。
思えばあの一件かあったから、月宮さんへの見方が変わったと思う。ただの口が悪い人じゃないんだな、と。

そしたらなんと、月宮さんはあの”伝説の営業マン”だということがわかった。
私や創くんが憧れている、生きた伝説を持つ人。

とても驚いたけど、すんなりと納得した。
この人なら確かにありえるって素直に思えたから。
憧れていた人の正体が月宮さんだとわかった今もなお、彼は私の憧れなのだ。
疑いの目で見る人やよく思わない人がいても、私は尊敬する。
何より、彼は嘘をついてまで自分の業績を上げたいような人間ではない。


でも、憧れの人だから好きになったんじゃない。

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