願うは君が幸せなこと

「………同じ気持ち?まさか。……正反対、だよ」

「え……」

「私の気持ちなんて何も知らないくせに。自分の気持ち押し付けないでよ」

月宮さんは、さっきまでの笑顔が嘘のように表情をなくした。
私もさっきまでの作り物の笑顔が、完全に崩れた。

「よく嬉しいなんて言えるね。そんなこと聞かされるほうは全然嬉しくない!」

「……!」

駄目だ、これは八つ当たりだ。月宮さんは何も悪くないのに。
もう月宮さんの顔を見ることも出来ない。
きっと今の私、最悪な顔してる。好きな人の幸せを喜んであげられなくて、醜い顔してる。

例えば今ここで私が我慢して、”よかったね”、”お幸せにね”って言えたら、月宮さんとはこれからも友達や相談相手として近くにいられたかもしれない。
だけど我慢出来ずにぶちまけてしまった。
これではもう、前みたいに話すことも、くだらない言い合いをすることも出来ない。

そんなことを考えたら、いつの間にか涙が顎先から地面へポタポタと落ちていた。

「……も、帰って……。これ以上、一緒にいるの、つらいから……」

なんとかそれだけ言って、月宮さんに背中を向けた。
お願いだから、同情もなにもせずに立ち去ってほしい。こんな姿見られたくなかったのに。

「……ふざけんなよ」

「どっちが、……!」

低い、怒ったような声にもう一度振り返って、思わず口を閉じた。
言おうと思っていた言葉を飲み込んで、月宮さんの顔を見つめた。

どうして月宮さんがそんな顔をしているんだろう。
そんな、泣きそうな、傷付いたような。

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