願うは君が幸せなこと
「お前が何考えてんのか、さっぱりわかんねえ」
少し震えた声でそう言われた。
それは怒りからくる震えなのか、それとも別の感情だろうか。
「正反対?なんだそれ。それがお前の本心かよ。お前今までずっと、俺のことそんな風に思ってたのかよ」
「……え?」
月宮さんの言葉と口調に違和感を感じる。
どうしてそんなに悲しそうで、苦しそうなの。
「俺に名前で呼ばれたのも、仕事の相談したのも、実は全部ありがた迷惑だったってことか?……じゃあはっきりそう言えばよかっただろ!」
何を言っているのだろうか。
月宮さんにされたことでありがた迷惑だった時なんて一度もない。
名前で呼ばれて嬉しかった。相談にのってくれて、尊敬した。
第一、私はあなたのことを好きなのに。
だから正反対だと、そう言ったのに。
「”何も知らないくせに”って、お前こそ俺の気持ち何も知らねえだろ!俺が何年も前からお前のこと見てたなんて、気付きもしなかっただろうが!」
「………えっ……?」
今、なんて言った?
”何年も前から”?
「ああそうだよ、俺はずっとお前のこと見てたんだ。エレベーターで初めて喋った時より前から、いつもお前を探してた」
なんだか、訳がわからなくなってきた。
どういうことだろう。月宮さんがずっと私を見ていた?探していた?
それはおかしい。だってそんなの、何とも思ってないような相手にはしない。
まるで、私が月宮さんにしてることみたい———。
「……もう終わりにする」
そう呟いた月宮さんが、困惑したままの私へと近付いてくる。
さっき払った手でもう一度腕を掴まれて、ぐっと距離が縮まった。