願うは君が幸せなこと
四階の通路を進みながら、創くんはニコニコしている。
「実は僕、資料室って数えるほどしか来たことなくて。いつも探すのに時間かかっちゃって大変なんです」
どうやら付いて来てよかったみたいだ。
今度ちゃんと掃除して整理しようと考えて、そんな時間ないなと思い直した。
「鍵かかってないからいつでも入れるし、一回だいたいの場所把握しに来たらいいんじゃない?」
「そうします。……あれ、ドア開けっ放しになってますよ」
創くんが言った通り、資料室のドアが少し開いたままになっている。
誰かがちゃんと閉めずに行ってしまったのか、それとも中に誰かいるのだろうか。
創くんはドアの隙間からそーっと中を覗き込んで、確認出来た瞬間、ドアを勢いよく開けた。
「なんだ、千葉さんじゃないですか」
「え?千葉さん?」
創くんの後ろから中を覗いてみる。するとそこには、ファイルをいくつか抱えた千葉さんがいた。
「創と瀬名さん。二人とも資料探し?」
「はい。……あ」
中に足を踏み入れて千葉さんへと近付いていった創くんが、何かに気付いたように小さく声をあげた。
どうかしたのかと私も足を進めると、千葉さんの他にもう一人、先客がいた。
「あら、あなた確か……」
前に一度直接話したことがあるので、顔を覚えていたらしい。私に気付いて声をかけられる。
咲野さんだった。
「顔見知り?」
千葉さんが意外そうに尋ねてくる。
創くんは不思議そうにみんなの顔を見渡している。
「前に挨拶させてもらったんです。ね、瀬名さん、だったかしら?」
「……こんにちは」
合ってますよ、という意味も込めて軽く頭を下げた。
微笑んだつもりなのだけど、上手く出来ているだろうか。