願うは君が幸せなこと
「私がここに転勤してまで追いかけたかったのは、千葉さんよ。……一目惚れだったの。入社したばかりの頃、本社で研修を受けた時からずっと好きだったの」
「……そうだったんだ」
「私ね、今でこそ綺麗だとか色々言ってもらえるようになったけど、新入社員の頃は今よりださくて不細工で、常に背中が曲がってるような人間だったのよ」
そんなことを言う咲野さんをまじまじと見てしまった。
ださくて不細工な咲野さんなんてとても想像出来ない。
「じゃあ今みたいに変わったのって」
「もちろん、あの千葉さんに釣り合う女になる為。胸張って付き合えるようにね」
あはは、と笑った咲野さんは、どこか楽しそうだった。
まだ千葉さんとは付き合えていないけれど、随分と生き生きしている。
やっぱり咲野さんはとても眩しい。
……つい羨ましくなってしまう。自分の力で自信を身に付けたこの人を。
「だから遠慮なく月宮くんと幸せになってよ」
「え……」
「月宮くん、ここ数日元気ないから。瀬名さんが原因なんじゃないの?」
そう言われて、視線を床に落とした。
ここ数日ってことは、私と話をした時からだろうか。
あんなに堂々としていて遠慮のない月宮さんが落ち込んでいる姿を想像して、今すぐにでも駆け出したい気持ちになった。
話をしないと。
今度こそ、お互いに本音で。
「あ、もちろん私のことも応援してよ!瀬名さんが協力してくれたらなんか上手くいきそうな気がする!」
私を励ますように明るい声でそう言った咲野さんに、私も笑って見せた。
「うん、応援する」
嬉しい、と満面の笑みになった咲野さんを見て、この人に落ちない男なんているのかと、本気で思った。