願うは君が幸せなこと

どこにいるんだろう。
休憩所?だとしたらここから一番近いのは一つ上の階だ。
休憩しないにしても、缶コーヒーだけ買いに行った可能性はある。

ヒールの音を響かせながら階段を駆け上る。
しかしフロアの手前に確保された休憩所には、人影はなかった。

他に月宮さんが行きそうな所はどこだろうか。
考えてみてもさっぱりわからなかった。基本的にあの人は、いつも神出鬼没だった。

夏美なら見当がつくかもしれないと思い、聞いてみようと携帯を取り出そうとして、鞄の中に入れっぱなしだったことを思い出した。
一度営業部に戻ってみるべきだろうか。

まだ開発部に戻ってきていないか確認してみようと、階段で二十一階から二十階へと降りた。
案の定まだのようで、エレベーターを待つことにした。


「……会いたいなあ」

心の中だけに留まらず、ポロリと口から零れてしまった。

初めて話した時は、出来ればもう二度と会いたくないとさえ思った相手だ。
今、もしあの時と同じことを言われたって、全然怖くないだろう。私はもう、月宮さんがどういう人か、たくさん見てきた。


下から昇ってきたエレベーターが二十階で止まった。

目の前でゆっくりとドアが開いて、エレベーターの中の光が通路に差し込む。

少し俯いていた私の視界に、誰かの足が映り込んだ。
先客がいたのかと、目線を上へと向けていく。

「……やっと見つけた」

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