願うは君が幸せなこと
「悪かったと思ってるよ。……本当は俺だって、もっとお前に優しくしたいんだ」
「なっ……」
自分の顔がみるみる熱くなるのを感じた。
月宮さんが、私に優しくしたい、だなんて。
普段の彼とはあまりにもかけ離れた、突然の女性扱いに、妙に照れくさくなってしまう。
見れば、月宮さんの顔も少し赤い。
「……なあ、ここまで言えばもうわかんだろ?俺がお前のことどう思ってるか」
「え、っと、あの……」
「逃げるなよ?」
緊張のあまり後ずさりしそうになる私の腕を、パシッと掴まれた。
今度はいくら振り払っても離してくれないだろう。
「言っとくけど、お前も似たようなこと言ってるんだからな。俺と咲野が付き合ってるって勘違いして、幸せになってほしいと思えなかった、って」
「あ……」
「観念しろ」
私の腕を掴んでいる月宮さんの手が、するりと位置を変えた。
指を絡めるように手を握られて、月宮さんの体温が直に伝わってくる。
月宮さんは余裕そうな言葉を吐きながらも、その表情は真剣そのもの。
熱っぽい視線を向けられて、一歩も動けなくなってしまう。
「あの日の、仕切り直し」
「……?」
「お前は俺と、……同じ気持ちなのか?」
聞き覚えのある台詞を言う、少し掠れた声。
それを聞いた途端、目がジワリと滲んだ。
握られた手を、存在を確かめるようにぎゅっと握り返した。
「多分、きっと、おなじ」
そう言うと、月宮さんは優しく笑いかけてくれた。