願うは君が幸せなこと
「よく考えれば、完全に二人きりになるのって初めてなんだよな」
ふいに、月宮さんがそう呟いた。
「え?」
「会社の会議室で二人でも、夜のエレベーターで二人でも、会社自体には人がいるだろ?だからこんな風に誰にも邪魔されない場所で二人きりなのは初めて。……だな」
月宮さんが不敵に笑った。
忘れかけていた緊張感がまた戻ってくる。
じりじり近付いてくる月宮さんに、ついつい後ずさりしてしまう。
「キスしていい?」
「え、あ、そ、そんなのいちいち聞かないでよ……!」
「じゃあもう聞かない」
「!」
目を閉じる暇もなく、噛み付くようなキスをされた。
何かの拍子に何かのスイッチが入ってしまったのか、逃さないとでも言うように腰に手を回される。
ソファーの背もたれに体を預けて、月宮さんからのキスを精一杯受け止める。
会社でするのと家でするのとでは、こんなにも違うのかと、頭の隅っこで思った。
月宮さんの新しい一面をまた一つ知ることが出来て、胸が震えた。
こんな風に、私しか知ることの出来ない月宮さんを、どんどん増やしていけたらいい。