願うは君が幸せなこと
「何のことか知らないけど、考えがあるから任せろって言ってただろ。だから福島は用事も無いのにわざわざ千葉さんと一緒に会社に戻った。そこに俺がいたら、多分邪魔になる」
「……あ」
さっき、例の噂が本当か確かめることについて、私に考えがあるんだと夏美は言っていた。
だから千葉さんと店を出て行ったのか。
千葉さんと二人で話をするために。
「そんなこともわかんねーのかよ」
「う、うるさい」
呆れたような顔をして、月宮さんが会社がある方向へ歩き出した。
私は一瞬考えて、急いでその背中を追いかけることにした。
「待って、私も行く」
「はあ?なんだよついてくんなよ」
「アンタについていく訳じゃないわよ!会社に行くって言ってんの」
…少し怖いけど、千葉さんと夏美がどんな話をしたのか気になってしまう。
それに、もし千葉さんに会えたら食事のお礼を言いたい。
明日でもいいのだけど、このまま一人だけ帰るのはなんだか気が引けた。
「……好きにすれば」
「好きにするわよ、言われなくても」
月宮湊というこの失礼極まりない男と一緒に歩くのは正直ムカムカするけれど、仕方ない。
この人、本当に夏美の彼氏なのだろうか?
聞いてみようかと思って隣を見上げると、バッチリ目が合ってしまった。
「……なんだよ」
「そっちこそなによ」
ムカついたので、やっぱり何も話しかけないことにした。