願うは君が幸せなこと
お昼休憩になり、四階にある資料室へ向かうことにした。
エレベーターのボタンを押して待っていると、七階についたエレベーターから夏美が出てきた。
「あ、外回り終わったの?」
そのエレベーターは上に向かうようなので乗らずに見送って、もう一方のエレベーターの前に立ちながら夏美に話しかけた。
「うん。今からお昼?一緒に食べない?」
「ごめん、ちょっと資料室に用事があるんだ」
「そっか。話したいこともあるんだけど仕方ない」
そう言われて、少しドキッとした。
多分、昨日の夜のことだろうと予想出来たからだ。
夏美は千葉さんとどんな話をしたのか聞きたいし、私が昨日見た出来事も夏美に話しておきたい。
「あの、やっぱり私も…」
「瀬名さん」
夏美と一緒にお昼食べる、と言いかけた時、それを遮るように名前を呼ばれた。
その瞬間、私の体は不自然に強張った。
「あ、福島さんもいたんだ」
「千葉さん、今日は外でお昼ですか?」
「いや、ちょっと瀬名さんに用があるんだ」
「えっ……」
驚いて顔を上げると、千葉さんはいつものようににこやかに笑っていた。
それがなんだか怖くて、咄嗟に笑い返すことが出来ない。
夏美はそんな私を見て、少し首を傾げている。
「今から時間ある?」
「あ、あの、今から資料室に行かないといけなくて…」
「はは、休憩時間まで仕事?じゃあ俺もついていくよ」
タイミングがいいのか悪いのか、下へ向かうエレベーターが到着した。
二人で乗り込んで四階のボタンを押す。
ドアが閉まる直前、まるで助けを求めるように夏美の顔を見てしまった。
だけど、千葉さんとはきちんと話さないといけない。
浮気されているのを知ってしまった以上は、このまま付き合っていく訳にはいかない。
ちゃんと話してすっきりさせたほうがいいだろう。