願うは君が幸せなこと

お昼休憩になり、四階にある資料室へ向かうことにした。
エレベーターのボタンを押して待っていると、七階についたエレベーターから夏美が出てきた。

「あ、外回り終わったの?」

そのエレベーターは上に向かうようなので乗らずに見送って、もう一方のエレベーターの前に立ちながら夏美に話しかけた。

「うん。今からお昼?一緒に食べない?」

「ごめん、ちょっと資料室に用事があるんだ」

「そっか。話したいこともあるんだけど仕方ない」

そう言われて、少しドキッとした。
多分、昨日の夜のことだろうと予想出来たからだ。
夏美は千葉さんとどんな話をしたのか聞きたいし、私が昨日見た出来事も夏美に話しておきたい。

「あの、やっぱり私も…」

「瀬名さん」

夏美と一緒にお昼食べる、と言いかけた時、それを遮るように名前を呼ばれた。
その瞬間、私の体は不自然に強張った。

「あ、福島さんもいたんだ」

「千葉さん、今日は外でお昼ですか?」

「いや、ちょっと瀬名さんに用があるんだ」

「えっ……」

驚いて顔を上げると、千葉さんはいつものようににこやかに笑っていた。
それがなんだか怖くて、咄嗟に笑い返すことが出来ない。
夏美はそんな私を見て、少し首を傾げている。

「今から時間ある?」

「あ、あの、今から資料室に行かないといけなくて…」

「はは、休憩時間まで仕事?じゃあ俺もついていくよ」

タイミングがいいのか悪いのか、下へ向かうエレベーターが到着した。
二人で乗り込んで四階のボタンを押す。
ドアが閉まる直前、まるで助けを求めるように夏美の顔を見てしまった。

だけど、千葉さんとはきちんと話さないといけない。
浮気されているのを知ってしまった以上は、このまま付き合っていく訳にはいかない。

ちゃんと話してすっきりさせたほうがいいだろう。

< 27 / 152 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop