願うは君が幸せなこと
課に戻ると、千葉さんはまだ戻ってきていないようだった。
資料室から持ってきたファイルをデスクにどさっと下ろす。
ろくに中身を見ずに選んでしまったから、無駄に多く持ってきてしまった。
午後からはこれに目を通して、創くんの為に出来ることをしていくつもりだ。
「祐希!」
夏美が、心配そうな顔で駆け寄ってきた。
もうすぐ休憩時間が終わるので、ほとんどの社員が部署に戻ってきている。
お互いに話したいことは山ほどあるけれど、今は出来ない。
「あとでちょっと話そう」
「うん、仕事上がったら休憩室で待ち合わせね」
そう約束して、二人とも席に戻った。
休憩室というのは、五階、十階、十五階、というように所々に設けてあって、私達がいつも使うのは五階だった。
自動販売機とテーブルがいくつか並んでいて、小さいけれど喫煙スペースもある。
社員が自由に使っていいことになっていて、昼休憩は人が多いけれど夜はガラガラなので都合がいい。
午後からの仕事に気合いをいれるべく、よしっと小さく呟いた。
創くんは、今は自席でキーボードを叩いている。おそらく、今度行く取引先でのプレゼンテーション資料を作っているのだろう。
創くんの来週までのスケジュールを頭の中で思い浮かべて予想を立てる。
伝説の営業マンみたいになりたい、という彼の目標に寄り添って、そこまで導いてあげたいと強く思った。