願うは君が幸せなこと
「そういえばさ、資料室に月宮さんも来たんだよ。絶妙なタイミングで」
「ああ、それ私が教えたから」
「ん?」
夏美の言っている意味がよくわからなくて、つい首を傾げてしまった。
夏美はミルクティーの缶を持ったまま、背もたれに背中を預けた。
「あの時、エレベーターの前で祐希の様子がおかしかったから。もしかしたら昨日何かあったのかと思って、月宮にメールしたの」
「え、なんて?」
「『祐希と千葉さんが今から資料室で話し合うみたいなんだけど心当たりない?』って。それであいつなりに気になって様子見に行ったんじゃない?」
思いもよらない事実に目を見開いた。
じゃあ千葉さんはあの時、私の為にわざわざ来てくれたっていうのだろうか。
資料室に用事があるなんてのは嘘で、二十階から四階まで、自分の休憩時間を無駄にして、わざわざ。
いくら夏美に言われたからって、そこまでするだろうか?
「ね、月宮って意外といいところあるでしょ?口は最強に悪いけど、気持ちと言動がちぐはぐで、まさに天邪鬼」
「ま、まあ……そうだね」
「でもまさかわざわざ資料室まで行くとは思ってなかったなあ。祐希のことが心配だったのねー」
ふと、夏美の言葉に違和感を感じた。
昨日から何かがおかしい気がする。
「……ねえ、付き合ってるんだよね?」
「は?誰と誰が?」
「え、あの、夏美と月宮さん」
夏美が持っているミルクティーの缶が、ベコっと音を立てた。