願うは君が幸せなこと
「はあ!?んなわけないでしょ!?やめてよ!」
「ええっ!?違うの!?」
「違う違う!ありえない!」
嫌そうな顔で必死に否定をする夏美を見て、少しだけ月宮さんが気の毒になった。
自分が勘違いをしていたことにやっと気が付いた。そもそも、夏美から直接彼氏だと言われてもなかったのだ。
だけど、知らない男の人と二人で食事をしている所を見たら、勘違いしても仕方ないだろう。
そこでちゃんと本人に確認しなかったのが悪かった。
「私、昨日あのレストランで会った時からずっと誤解してた」
「はあ、びっくりした。私にも選ぶ権利はあるの。月宮だって私みたいにうるさい女はタイプじゃないだろうし」
「でも、ある意味お似合いかもよ?」
「無理無理」
少しへこんでしまった缶をテーブルに置いて、夏美は頬杖をついた。
勘違いされたことがそんなに嫌だったんだろうか。だけどそれなら、いまいち二人の関係性がわからない。
同い年だけど同期じゃなくて、お互いの部署もかなり離れている。
普通に働いているだけでは、営業補佐とエンジニアはそうそう繋がりがあるものでもない。
二人で仕事の後に食事をするなんて、それなりに親しくないと出来ないだろう。
「じゃあどういう関係なの?」
気になって聞いてみると、夏美はニヤッと笑って身を乗り出してきた。
「気になる?」
「うん、まあ、ちょっと」
「へーえ」
何がそんなに面白いのか、ニヤニヤしている夏美を不思議に思った。
面白いというか、楽しそうだ。
「そうねえ、相談相手って感じかな?」
「……相談相手?口を開けば暴言を吐くあの人が?」
そう言うと、夏美はますます楽しそうに笑った。