願うは君が幸せなこと
午後六時を過ぎた頃、創くんと先輩の帰りが余りにも遅いのでメールを一通送ってみた。が、すぐに返事は来ない。
報告は明日してもらうとして、私はもう帰ってもいいのだけれど、とてもそんな気分にはなれない。
心配だった。
まだ数人が残る営業一課を見回すと、課長も私と同じく心配そうな顔をしていた。
課長は創くんのことを気にかけていたので、何か思うところがあるのだろう。
どうにも気分が落ち着かなくて、席を立つ。
コーヒーでも飲んで気持ちを落ち着けようと思い立って、階段で五階に向かった。
誰もいないだろうと思っていた休憩室には、知っている顔が二つあった。
「あれ、祐希まだ残ってたの?」
「……」
三十分ほど前にお疲れ様ですと言って部署を出て行った夏美が、驚いた顔で話しかけてきた。
私も夏美は帰ったと思っていたので驚いた。
そして、夏美と同じテーブルについている人に横目で見られて、ふいっと顔を逸らされた。
別にいいけどなんだかムカつく。
もう話すことはないと思っていた、月宮さんだった。
「夏美こそ。何してるの?」
「お前に関係ない」
ああ、この感じ。
いちいち口が悪くて腹が立つのだ。
「私は夏美に聞いてるの」
「チッ、うるせーな」
「もー二人とも!」
すぐに言い合ってしまう私達を、慌てて夏美が止めに入る。
夏美がいなかったらきっと、どんどんヒートアップしていってしまうだろう。
「たまたま月宮とエレベーターで会ったからちょっと雑談してただけよ。それより祐希はどうしたの?残業してまで終わらせるような仕事、なかったよね?」
不思議そうに尋ねられて、言うべきか迷った。
創くんのことは、もしかしたらただの私の心配し過ぎかもしれないから。