願うは君が幸せなこと

創くんの改善点は、創くんが自ら作成した自己分析表によると、新人だからこその不慣れな部分だとしている。
それなら、先輩に意見を求めても仕方がない。慣れるしかないのだから。

それでも昨日、創くんがある先輩に相談しているところを目撃した。すると、みんなそういう時期を乗り越えてきたからこそ今がある、と言われてしまっていた。

創くんも重々それをわかっているから、自分でどうにかしないといけない、と余計に周りが見えなくなっているのかもしれない。

「なるほど。じゃあ祐希がなんとかしてあげるしかないかー」

「私もね、優秀な先輩に意見もらおうかと思ったんだけどさ……」

「うん?」

はあっと息を漏らす。
ティラミスと一緒に頼んだアイスティーを一口飲んで、意味もなくストローをもてあそんでみる。

「今の営業部で一番優秀な人って、千葉さんなんだよね……」

「……ああ……」

夏美は納得したように目を瞑った。

仕事にプライベートを持ち込んではいけないことはわかっているつもりだけど、どうも相談する気にはなれなかった。

なので私も、今はどうしたらいいか悩んでいる状態なのだ。

「……じゃあさ、とっておきの相談役、紹介してあげよっか」

夏美が意味深な笑みを浮かべながらそう言った。
なんだか嫌な予感がする。
夏美は鞄から携帯を取り出して、何かをし始めた。

「祐希、今日の夜暇?」

「え、まあ、空いてるけど……」

「じゃあ六時に会社まで来てくれない?一応創くんの自己分析表とか今回の報告書とか用意してくれれば助かる」

「え、ちょっと待ってよ、誰なのそれ」

強引に話を進める夏美を慌てて止める。全然話が見えない。

「いいから。絶対ためになる話が聞けるわよ?」

不敵に笑った夏美に不安になりつつも、結局誰かとの約束を無理矢理取り付けられてしまった。


< 48 / 152 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop