願うは君が幸せなこと

「夏美とは同級生なんだよね?」

「あー、まあな。あいつに言われるまで気付かなかったけど」

ひどい男だ。
夏美のように明るくて元気な女子がいれば、覚えていそうなものなのに。
どれだけ他人に興味がないんだと呆れてしまう。

「夏美の高校生の頃見てみたかったなあ。今と全然変わらなさそう」

「覚えてない。喋ったことなかったような気がするし」

「なにそれ。多分もし私が同級生でも、絶対覚えてないでしょ」

「……お前みたいな奴なら俺、忘れないと思うけど」

「……!」

それは、どういう意味なのか。
お前みたいな、とは、どういう事を指してるのだろう。

少し考えて、どうせ”お前みたいにうざい女”とかそういう意味だろうと結論付けることにした。
多分外れてないと思う。

月宮さんは顔色一つ変えずにビールを飲んでいる。
その様子をじいっと見ていると、パチっと目が合う。
月宮さんの目は、真っ直ぐだ。
この人の前ではきっとどんな嘘も見破られてしまうような気さえする。

居心地が悪くなって、視線を逸らす。
好きな料理ばかり頼んだテーブルの上に目線を泳がせて、真っ直ぐな目から逃れる。
捕まってしまったら、逃げられないような気がした。


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