願うは君が幸せなこと
「なあ、さっきの話」
「え、なに?」
月宮さんから質問されるなんて思っていなかったので少し驚いた。
私のことなんてどうでもいいと思っていそうなのに。
「もう一回確認。お前もう本気で千葉さんに未練ねえの?」
そう尋ねてきた月宮さんは、真剣な目をしていた。
その質問の答えは、即答出来るほど自分の中で決まっているけれど、私はすぐに返事をしなかった。
不思議だったから。
どうしてそんなに、私と千葉さんのことを気にするんだろう。
助けてもらっておいてこんなこと言いたくないけれど、月宮さんには関係ないことだ。
私が千葉さんのことをまだ好きだとしても、私と千葉さんがよりを戻したとしても、月宮さんには何も関係ないし影響しない。
それなのにどうしてそんなに、千葉さんとのことを掘り返してくるのか。
嫌がらせなのかと一瞬思って、頭の中ですぐに否定する。何故かわからないけれど、そんなことはしないだろうと思ったから。
すぐに答えない私を見てどう思ったのか、月宮さんは少し戸惑ったような表情をした。
それもなんだか意外で、一応気を遣っているのかと気付いた。
「……だったらどうなの?」
「答えろよ」
「知ってどうするつもり?」
首を捻りながらそう聞くと、月宮さんはジョッキの持ち手を握って、中に入っている液体を見ながら口を開いた。
わざと私から目を逸らしたように感じた。
「今後の俺の行動を考える」
「……はあ?なにそれ」
「……はあ」
今度はあからさまに呆れた顔でため息をつかれる。
月宮さんが考えてることが何一つ理解出来なくて、会話が成立しているのかもわからなくなってくる。
「もういい。俺は俺の好きなように生きる」
「……好きなようにしたらいいんじゃない?」
「言ったな」
そう言うと、月宮さんは片方の口角を上げてニヤッと笑った。
意味深な言葉と表情に、ますます月宮さんのことがわからなくなった。