願うは君が幸せなこと

その後も会話は続いたり途切れたりしたけれど、不思議と二人で過ごすことに気まずさや居心地の悪さは感じなかった。

むしろ千葉さんと過ごしていたときの方が疲れていた。よっぽど肩に力が入っていたのだろう。

理由を考えて、何も考える必要がないからだとわかった。
気取る必要なんてない。
思ったことをそのまま口に出して話しかける。
聞かれたことは思ったまま答える。
月宮さんには、それが出来るのだ。


そしてお腹も膨れてきた頃、月宮さんが本題を持ち出した。

「……それで?福島に仕事の相談に乗ってやってくれって言われてんだけど」

「あ、そうなの。私じゃなくて、私が補佐してる営業の男の子のことなんだけどね。あ、ほら!この前休憩室で話してた創くん」

「ああ、なんか言ってたな。俺はその創くんとやらの顔は知らないけど」

「可愛い子なんだよー。まだ入社二年目で……って、なんで開発部のアンタに相談?」

「知らねえよ、福島に聞け」

心の中で夏美に問いかける。
月宮さんも同じことをしてそうだった。

「まあ、協力出来るかは別として、話ぐらいは聞くけど」

……案外、第三者からの観点って大切かもしれない。
自分達では気付かないことを指摘してくれるかも。
そう思って、月宮さんに創くんのことを話すことにした。

月宮さんは、普段から夏美に相談され慣れているのか、静かに話を聞いてくれた。
私が話す間は口を挟まずに、頷いたり相槌をうったりする姿を見て、聞き上手な人なんだなと思った。

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