願うは君が幸せなこと
「契約が上手く取れないのは新人で不慣れだからじゃない。なめられてるからだ。その創ってやつはそう思われやすいタイプなんだろ。男なのにお前に可愛いとか言われるぐらいだからな」
「……」
「いいか、営業はなめられたら終わりだ。この人になら任せてみたいと、尊敬させたら勝ち」
一見、言葉が悪いように感じるが、言ってることはとても納得出来る。
「そしたらあとは相手が自社の悩みをバンバン打ち明けてくるから、それに見合うプランをこっちが提供していくだけ。当然、何聞かれてもいいように常に最新の情報を頭に入れとく」
「それは、なんていうか、理想の形だね……」
もちろん、言うだけなら簡単だ。
だけどそれ以前に根本的な所に気付かされたような気がして、胸が震えた。
「それから」
「そ、それから?」
もっと色々話して欲しくて、思わず身を乗り出して月宮さんの顔を食い入るように見つめた。
普段口数が少ない人が饒舌になったら、こんなに面白いものなのか。
「そいつ、お前の話聞く限りでは努力家だな」
「うん、いつもはすごく前向きで、よく勉強してる」
「そういうのに多いんだよな。実戦は少ないのに知識ばっかり増やしていって、プレゼンで専門用語ばっかり使うやつ」
思い当たる人が身近にいるのか、月宮さんは斜め上に視線を向けて嫌そうな顔をした。
「俺らみたいにこの会社に勤めててIT関連に精通してるんなら別にいいけど、取引先の人がそうとは限らないからな」
「……確かに創くん、報告書とか社内メールとかも、私達ですらあんまり使わないような専門用語よく使ってるかも……」
ぽつりとそう零すと、月宮さんはポンとテーブルを軽く叩いた。