願うは君が幸せなこと
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「僕、瀬名さんに迷惑かけてばっかりですよね」
小さな声で、絞り出すように言った創くんの横顔に、夕日が影を落とした。
窓から見えるオレンジ色の空が、余計に創くんを寂しそうに見せている。
「………すいません、ちょっと」
そう言って私の前から去ってしまう創くんのことを、追いかけることが出来なかった。
ずっと可愛い後輩だと思ってきた。
一生懸命で、前向きで、素直で愛想良くて。
つい面倒を見たくなるような後輩だと。
だけど彼にだってプライドはあるのだ。
七階の通路の一番奥、ちょうど西日が差し込む場所で創くんと向かい合って、私なりの考えを話した。
月宮さんにもらったアドバイスを参考にして、次はこうしてみたらどうかな、これが駄目だったんじゃないかな、と。
黙って私の話を聞いた後に創くんが言った言葉が、私に迷惑をかけているというものだった。
謝って欲しいなんて思ってない。
迷惑だなんて思ってない。
ただ、創くんの役に立ちたいだけだった。
数日前に先輩から言われた言葉を思い出す。
創くんは私のことを必要としてるなんて、とんだ思い違いかもしれない。
私は、余計なことをしてしまったのだろうか。
自分の中のやる気が萎んでいくのを感じた。