願うは君が幸せなこと
次の日、朝から会議があるので早めに出勤することにした。
営業一課のドアを開けると、まだガランとした空間の中に一人だけ、シャキシャキ動く人がいた。
「おはよう夏美、早いね」
「おはよう。私も今来たばっかりだけどね」
営業部で会議がある時は、会議室の手配から書類やお茶の準備までを営業補佐が担当することになっている。
補佐の中ではいつも私と夏美が一番最初に出勤するので、必然的にほぼ二人で準備することになるのだ。
「先に椅子並べちゃおっか」
「そうだね」
七階にある会議室へと二人で向かう。
会議に出席する人数分の椅子を並べるところから始まるので、一人では少し大変だ。
朝から元気のいい夏美は、上機嫌で長テーブルを拭いていく。
話をするなら今しかないと思い、手を休めずに話しかけることにした。
「……あの人、すごいね」
「ん?誰?」
「月宮さん」
そう言うと、夏美は納得したように頷いた。
「でしょ?役に立ったなら良かった!あいつ本当に仕事の話に関しては頼りになるのよー」
「でもどうしてあんなに色々わかるの?夏美がいつも相談してるから?」
すると、夏美も不思議そうに顎に手を当てて考える素振りを見せた。
「さあー……。なんでだろうね。知識が多いから?」
椅子が歪まないように並べながら、汚れていないか確認していく。
大きな窓のブラインドを開けたら、気持ちのいい空が広がっていた。
「それで、創くんの役には立てそう?」
笑顔でそう聞いてくる夏美に、咄嗟に言葉を返せなかった。
そんな私を見て、夏美は椅子を並べる手を止めた。