願うは君が幸せなこと
「それなのに理想を壊したとか言って謝られて、そっちのほうがよっぽどショックだった!」
月宮さんの目を睨みつける。
私の反応に驚いているのか、月宮さんは目を見開いてパチパチと瞬きをしている。
自分でも、どうしてこんなに悔しい気持ちになるのかわからない。
だけど、月宮さんのことを根拠もなく悪く言う人がいることが、どうしても許せなかった。
それはきっと、月宮さんの色んな面を見てきたから。
無愛想な表情と冷たい言葉の裏に隠された、優しい部分を知っているから。
「……なんでお前がそんなに必死なんだよ」
「うるさい!文句ある!?」
こんな風にしか言い返せないなんて、私も月宮さんに負けず劣らずの天邪鬼なのかもしれないなと、この時初めて思った。
すると次の瞬間、月宮さんが噴き出した。
「ぶっ……、っくく……」
「ちょ、ちょっと何笑ってんの?私今怒ってるんだけど」
「わ、わり、……はは!」
突然笑い出した月宮さんに困惑するものの、さっきの辛そうな表情が消え去っていたので少しホッとした。
だけどつられて笑うのは癪なので、怒っている顔をなんとかキープする。
「あー、ははは……。………なあ、」
「……なによ」
「ありがとな、祐希」
真っ直ぐ私の顔を見てそう言った月宮さんが、とても嬉しそうに笑っていたから、もうこれ以上怒れなくなってしまった。
その顔が見られて良かったと、心の底から思ってしまったから。
「お前に知ってもらって良かった」
そんな、こっちまで嬉しくなる言葉をくれて、とうとう唇の端から笑いが漏れてしまった。