願うは君が幸せなこと
創くんは自分にはコーヒーを買っていたらしく、二人でテーブルに座って缶を開けた。
一口飲んでから創くんを伺うと、さっきの明るい顔は消えていて、硬い表情になっていた。
そんなに話しにくい内容なのかと、不安になってくる。
「……瀬名さん」
「は、はい」
すると急に創くんが立ち上がって、ガバッと頭を下げた。
「すみませんでしたっ!」
「わっ!なに?」
「生意気な態度とって、すみませんでした!」
この空間に誰もいなくて良かったと心から思った。
他の人が見たら、私が創くんをいじめているように見えることだろう。
「ちょ、ちょっとやめてよ、座って座って」
「僕、自分が情けなくて。自分の小ささが嫌になって……」
創くんは頑として、頭を上げようとしなかった。
床を見つめたまま、何かの謝罪をしている。
「瀬名さんにカッコ悪い所見られて、気を使わせてしまって。消えてしまいたいって思うくらいです」
「わかった、わかったから顔上げて座ろう?お願い」
頼むから、と言って、ようやく創くんは頭を上げた。
そうして見えた顔は、今にも泣きそうに歪んでいた。
椅子に座って、創くんはコーヒーの缶を見つめながら続けた。
「瀬名さん、僕が一番憧れてる人って誰だか知ってますか」
「もちろん、あの”伝説の営業マン”でしょ?早く近付きたいってよく言ってたよね」
それを目標にして頑張っているのを、すぐ近くで見てきた。
あんな風になりたいんだと、よく言っていた。
「……まあ、もちろんそれはそうなんですけど」
ばっちり的中させたと思ったのに、創くんはどこか歯切れの悪い返答だった。