願うは君が幸せなこと

そんなことを考えていたなんて知らなかった。
これが夏美の言っていた、男としてのプライドだったのか。

じゃあもしかしたら夏美は、創くんの気持ちに気付いていたのだろうか…?

「今はその時、どれだけ自分が幼稚だったかわかります。情けないとかカッコ悪いとか関係なく、自分が成長していくことを考えるべきだった。でも、その時はそんな余裕も無かったんです」

「幼稚だなんて、思ってないよ」

「…だから、瀬名さんは優しいんです。僕怒られたんですよ、福島さんに」

「え、夏美に?」

「それに、井山部長にも。うじうじ悩む前に行動しろって」

驚いた。
私が知らないところで、二人とも創くんのことを気にかけていたらしい。

そういえば夏美には、創くんに対して余計なお世話だったかもしれないと零したことがあった。
井山部長には、創くんが悩んでいるとこの前話した。

それを聞いて、私が見ていないところで創くんの背中を押してくれていたらしい。
私はいつも、誰かに助けられてばかりだ。

「人に注意されるまで行動出来ないなんて、最低ですよね。こんなんじゃ瀬名さんに好きになってもらえなくて当たり前です」

「違う。最低なんかじゃないよ」

自分のことを卑下する創くんを、見ていられなかった。
創くんの補佐をすることになってからずっと、一番近くで頑張る姿を見てきたのは私だ。

「もっと自信持ってよ。創くんが誰よりも頑張ってるの知ってるから。だから私は創くんの役に立ちたいと思ったんだから」

「瀬名さん……」

創くんの顔が、くしゃっと歪んだ。
泣きそうな顔で、懸命に笑おうとするけど上手くいかない。そんな顔だ。

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