願うは君が幸せなこと


井山部長が帰る日を迎えた。

朝から一課の全員が集合し、井山部長からの挨拶を聞く。

「一週間、いい勉強をさせてもらった。これからもこの調子でな。この課長の元だったらのびのび働けるんだから、今のうちに自分の営業スタイル見つけとけよ!」

井山部長はそう言って課長の背中をバシバシと叩いた。多分相当痛いと思う。
この二人、実は結構似た者同士なのかもしれない。

そしてやっぱり井山部長の言葉は、月宮さんと同じなのだ。
それは月宮さんが井山部長に育てられたという何よりの証拠。

「じゃあ俺はとりあえず退散するから、みんな仕事に戻ってくれよ!じゃあな!」

社員たちが部長にお礼を告げる中、部長は一課を出ていった。
といっても、今日の夜に営業部全体と井山部長との飲み会が開催されるので、夜にもう一度会うことになるのだが。


こうしてまた、一日が始まる。

よしっと気合いを入れてデスクに座ると、ふいに創くんと目が合った。
すると創くんは、昨日と打って変わって明るい表情をしていた。
そして私に向かってピースをしてきたのだ。

まるで「もう大丈夫です!」と言われているようで、私も同じようにピースを返した。
久しぶりに見る創くんらしい満面の笑みに嬉しくなって、私も負けないくらい笑って見せた。

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