願うは君が幸せなこと

「祐希、夜の飲み会参加するんでしょ?」

夏美がデスクへと戻る途中で話しかけてきた。
今日もスーツ姿とまとめ髪が決まっている。

「もちろん。井山部長にはお世話になったしね。夏美は?」

「行く行く。……ちょっと人事の先輩から聞いたんだけどね、面白いことになりそうなの」

夏美は誰にも聞こえないように声を潜めて、意地悪く笑った。

「面白いこと?」

「私も詳しいことはまだ知らないから、飲み会で明らかになると思うんだけどね」

「はあ……」

一体何の話だろう。
噂好きの夏美には、人事部にまで知り合いがいるらしい。
このビルの中にどれだけのネットワークを持っているのか、ちょっと恐ろしくなった。

「あ、そうだ。昨日創くんと話してたでしょ?もう大丈夫なの?」

「あれ、見てたの?」

「違う違う。創くんが祐希に夜話したいって言ってたの聞いたからさ」

話し合えたのは、夏美のおかげでもある。
私が困った時にいつも手を貸してくれる、頼りになる同期であり、友達だ。

夏美は、創くんの気持ちに気付いていたのかもしれない。
ずっと同じ一課で働いてきたなら、充分ありえる。

「うん、もう大丈夫。今日からは心機一転、また二人で頑張るよ」

「そっか。それならよかった」

安心したように息をついた夏美を見て、今度夏美が困っている時は私が助けようと強く思った。

仕事が終わったら飲み会をするお店まで一緒に行こうと約束をして、お互いに仕事へと戻った。

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