願うは君が幸せなこと

仕事を終えて夏美と二人で向かったお店には、もう既に半分ほどが揃っていた。
広い座敷に約五十人が集まるので、騒がしくなることだろう。
幸い営業部には無茶な飲み方をさせる上司はいないので、その点はとてもありがたい。

とりあえず、営業補佐で固まって座ることにしたので、私達のテーブルは女ばっかりになった。
すると必然的に、噂話が始まる。

「井山部長、すごく頼り甲斐のある人だったわね」

「確かに。ついて行きたくなるような上司って良いよねー」

「でも、どうしてわざわざ本社に視察に来たの?自分が前いたところだから気になったとか?」

「そんな理由で来ないでしょ」


ああでもないこうでもないと話し込んでいるうちに、どうやら全員集合したようだ。
普段なら残業して片付けるような仕事を残して、今日だけはなんとしてもこの飲み会に参加するようにと、みんな課長から言われているのだ。
課長はこの一週間で、井山部長に散々からかわれたのだろう。

幹事を務める先輩が指揮をとり、部長の挨拶が始まった。
それぞれのテーブルにビールが用意されて、乾杯をする。
こんなに大勢で飲むのは久しぶりだった。

それぞれ、背広を脱いだりネクタイを緩めたりして、好きなように飲み始めた。

私達は部長や課長にお酌をして回る。
私はあまりこういうのは得意ではない。得意なのは、夏美だ。
だけど意外とこうしていると、興味深い話が聞けたりもする。

部長のところへお酌へ行った時、こんな話をされた。

「瀬名ちゃん、これからも頑張ってよ!」

「はい、色々とお世話になりました」

「そうそう、うちの支社から一人優秀なの引っ張ってくることにしたから」

「え?」

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