願うは君が幸せなこと


本社に美人でスタイルのいい女性が転勤してきたのは、約一ヶ月後のことだった。

一体どこから情報を仕入れてくるのか不明だが、夏美が言うことには、彼女はサポートエンジニアをしているらしい。
男性社員顔負けの知識量と、女性社員ならではの柔らかい物腰で、数々の問題を解決してきたシステムの女医のような存在なのだという。


「システムの女医……」

「映画のタイトルにでもなりそうよね」

昼休み、夏美と二人で会社近くの定食屋に来ている。
今日の日替わりランチは白身魚のフライと春雨サラダ、ご飯にお味噌汁。これで五百円なのだから、この定食屋はいつも満席だ。

「でも納得。女の人で開発部ってうちの会社少ないけど、サポートエンジニアなら電話対応が主だもんね。それなら女の人のほうがやりやすいのかも」

「結局どうして本社に来たがってたのかはまだわからないのよねー。もうちょっと調べてみるか」

「夏美……、詮索しすぎはよくないよ」

そう言うと、夏美は少しだけ舌を出した。
これは注意しても無駄だろう。
とは言っても、夏美が仕入れた情報を興味津々で聞いてしまう私も私だ。
女ってどうしてこんなに噂好きなんだろうか。

「転勤して来た日の朝、エントランスで彼女のこと見かけたんだけど、井山部長が言ってた通り美人だったわ」

「私も一回くらい見てみたいなあ」

夏美がこんなにハッキリ美人だと言うなら、相当美人なのだろうなと思った。
夏美は、思ったことをそのまま口に出すタイプだから。

「いかにも仕事出来ます!って感じなんだけど、キツイ顔じゃなくて、優しそうな。……あ!ほら、ちょうどあんな感じの………」

夏美が窓の外を指差した。
その方向へと視線を向けると、このお店の前の道を歩く二人組がいた。

「……ん?」


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