願うは君が幸せなこと
すらっとした男女の二人組をじっと見る。
「あれ?月宮じゃない?」
夏美が驚いた声を上げた。
確かに、二人組の男の人のほうは月宮さんだった。
「ほんとだ……」
二人してべったり窓ガラスに張り付いて、はたから見ればかなり怪しい光景だ。
昼間に外にいる月宮さんが新鮮だった。
太陽光の下で見ると、いつもより健康そうに見える。
「……隣にいる女の人、転勤してきた女医本人だ」
「えっ?」
慌てて女の人の顔を見つめる。
柔らかい雰囲気を纏った、綺麗な人だった。
この人が、開発部に来た美人———。
二人並んで歩く姿を見て、胸がざわざわした。
言いようのないもやもやと、不安感がいっぱいに広がった。
「どうしてあの二人が一緒にいるの?もう仲良くなったの?」
訳がわからない、というように夏美が呟く。
私も心の中でまったく同じことを考えていた。
遠ざかって見えなくなった背中を、ぼんやりと窓の外に見送った。
実際には見えなくなっても頭の中には二人並んだ姿が鮮明に映り続けている。
「……」
そんな私を、夏美がじいっと見つめていた。
そのことに気付いて、映像を振り払った。
「あ、ごめん、どうかした?」
「………締め上げて聞いてみるか」
「え?なに?」
「なんでもない!」
再び定食に手をつけ始めた夏美がなんだか嬉しそうに見えたのは、私の気のせいだったんだろうか。