願うは君が幸せなこと
夕方、創くんとの話し合いを終えてデスクに戻ると、”仕事が終わったら五階の休憩所に来てね”と書かれた付箋がパソコンに張り付いていた。
間違いなく夏美の字だ。
引き出しを開けて付箋を取り出す。
使いやすい付箋、大きくて文字がたくさん書ける付箋、もったいなくてあまり使わない付箋の三種類を常備していて、今取り出したのはもったいなくてあまり使わない、可愛くてお気に入りの付箋だ。
”少し残業することになりそう”と書いて、今は席を空けている夏美のデスクのパソコンに貼り付けておいた。
戻って来たらすぐに気付くだろう。
「瀬名さん、さっき話してた契約更新に行く会社のことなんですけど」
創くんが駆け寄って来た。
最近の創くんは、前より頼もしくなってレベルアップしているので、私としても嬉しい限りだ。
「どうしたの?」
「千葉さんが前にシステムのグレードアップを勧めたことがあるらしくて、念押しの意味も兼ねて一緒に行くと言ってくれてるんです」
「そうだったんだ。それなら、都合がつくならついて来てもらったらいいんじゃないかな。千葉さんのセールストークも勉強になると思うし」
「ですよね!さっそくアポ取って来ます!」
嬉しそうに戻っていった創くんを見て、思わず笑ってしまった。
やっぱり創くんは元気なのがよく似合う。
それにしても、千葉さんと創くんが一緒に営業先に行くのは初めてのことだ。
もしかしたら千葉さんなりに、創くんの成長の手助けをしてくれているのかもしれない。
千葉さんは、そういうことに気付ける人なのだと言うことを、久しぶりに思い出した。