願うは君が幸せなこと

創くんと一緒に少しだけ残業して、五階へと降りて来た。
もうすっかり外が暗くなっている。
きっと外から見ると、煌々と明るいこの建物のほうが異質なのだろう。

五階はいつも通りもう人気がなく、空気がひんやりとしている。
そんな空気感とは正反対に、一ヶ所だけ騒がしい。

「アンタどういうつもり?私に言ったこと忘れたの!?」

「んなわけないだろ。上司に押し付けられただけだって」

「そんなんじゃもう私協力しないからね!」

「チッ、うるせーな……」

「はあ?元はと言えばアンタが…!」

椅子に座ってだるそうに足を組んでいる月宮さんと、立ち上がってテーブルに手をついている夏美。
他のフロアにも聞こえてしまうんじゃないかと思うほどの声で何かを言い争っているみたいだ。

「ちょっと、どうしたの?」

「あ、祐希……」

「……お疲れ」

すると夏美が、はあーーっと長い長い息を吐き出した。
それから呆れたように額に手を当てて首を左右に振っている。

「…もういい。今回はそういうことにしとく。祐希、私先に帰るね!」

「え?帰るの?ちょ、夏美!」

じゃっ!と手を挙げて鞄を肩にかけると、夏美は、スタスタと休憩所を出ていってしまった。
一体私は何のためにここに呼び出されたんだろうか。
しかもまさか、月宮さんがいるなんて。
最初から月宮さんもここに呼ばれていたのかもしれない。

急に二人きりにされて、正直戸惑った。
何を話せばいいのかわからなくて、とりあえず椅子に座ってみる。

……月宮さんと話すとき、いつもこんなに緊張していたっけ。


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