願うは君が幸せなこと
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「———では、次の更新は二年後になりますので」
「そういえば最近、動作が重いってボヤいてる社員がいたなあ……」
「機械の台数が増えたからかもしれませんね」
今日は、千葉さんと創くんが二人で契約を取りに来ている。
相手先の社員と向き合って座っている二人の斜め後ろで、私は控えめに立ってメモを取りつつ相槌をうっている状態だ。
さっきから千葉さんの華麗なる話術が展開される度に、創くんはキラキラと目を輝かせている。
「これを機にシステムの構築をもっと大きなものに見直して、そのサーバーの管理もこちらに任せて頂ければと思うのですが」
「うーん」
「そうすれば社員皆様のストレスも軽減され、会社のさらなる発展もスムーズに対応出来るようになります」
「……むう」
「長きに渡りお世話になっておりますので、工事費はサービスさせて頂きます。工事自体も一晩あれば完了しますので、ご迷惑をお掛けするようなことは一切無いと思われますが、いかがでしょう」
あ、落ちたな、と思った。
相手先の社員も、創くんも、みんな千葉さんの思い通り。
相手先の秘書のような男性と目が合った。
困ったような表情をしている彼が面白かったので、にっこりと微笑み返しておいた。