願うは君が幸せなこと
「で、月宮とはどうなってるの?」
「……はい?」
「あれ、違った?てっきりいい感じなのかと思ってたけど」
いきなり何を言い出すのかと、思わず身を引いた。
すると、千葉さんは楽しそうにくすくす笑った。
その顔も、片手をポケットに突っ込んだ立ち姿も、笑った時に細める目も、すべてが久しぶりだった。
懐かしいとすら感じてしまうほどだ。
「どうして私と月宮さんが」
「前にさ、資料室で話したこと覚えてる?」
千葉さんと資料室で話したことは一度きりだ。
別れ話をした、あの時だけ。
小さく頷くと、千葉さんは考え込むように口元に手を当てた。
「その時の月宮が入ってきたタイミングがあまりにも完璧だったからね。それに、あの月宮が誰かのためにあんなことするなんて意外だったからさ。今後急接近したりとかするのかなーって思ってたんだけど。違う?」
違う?と聞いておきながら、自分の言った言葉に自信があるらしいことが伝わってくる。
でも今回はハズレだ。
何故なら、月宮さんに急接近したのは私じゃないから。
「残念ですけど違います」
「うそ、絶対そうだと思ったのに」
「あはは、千葉さんでも間違えることあるんですね」
そう言って笑ってみせる。
そうしないと、勝手に色々思い出して勝手に落ち込んでしまいそうだ。
月宮さんと咲野さんの関係は、夏美に聞けばわかるのかもしれない。
だけど怖くて出来なかった。
あんな美人で仕事も出来て素敵な人に敵う要素なんて、私には何一つないから。
千葉さんは、そんな私の顔をじっと見つめて眉をひそめた。