アハト
ライフは昨日と同じ様にそこに存在した。

オトコはライフの足下からカゴを拾い、元の道へ戻った。

少女がその眼を瞬かせてオトコの前に立った。
腕の中にはアハトがいた。

『ライフ』
その声にオトコは止まる。

『ぼくの名はライフ』

オトコはライフを返り見る。

オトコの眼は怒りに満ちていた。

ライフは冷ややかに笑い斜めの視線で言う。
『きみの名は?』

『必要ない』
オトコは押し殺した声をライフに返す。
おはよう以外の言葉は初めてだった。

『本当は知ってるはずだよ。ぼくは知っている。』
ライフは挑戦的に薄く笑う。

『もうわかってるはずだ』
『限界が来てる』
ライフは静かな声で一つ一つ言葉を繰り出す。

オトコは動けない。
ライフは突然歩きだしオトコと少女の間で止まり首だけをこちらに向けて言った。

『行こう』

朱い唇がやさしく冷たい笑みを作っていた。
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