アハト
ライフとオトコと少女は星の道を歩く。

『懐かしいかい』
ライフは前を向いたままオトコに問う。
『ああ』
初めての道のはずなのにオトコはそう答えた。

ライフの髪は色のない風に吹かれ、少女もまたそうだった。

黒い箱が現れた。
オトコはそこが怖かった。
だが立ち止まる事は許されなかった。
許さなかった。

ライフの箱は漆黒だった。
壁も机もベッドも心地良いほどの真っ黒なそこはどこか見覚えがあった。

『ぼくがあなたの代わりにここに住んでいる』

黒の静寂に光が射した気がした。
ライフは地平線の彼方の太陽のごとくまぶしく思えるその目をこちらに向けて言った。

オトコは瞳をそらす。

『ここも君の白の部屋と同じだよ』
ライフは悲しそうに言った。
オトコをまっすぐに見据え。

ライフは静かに続ける。

『ぼくは君の代わりにここに住んでる』
『君がここにいたらぼくたちは完全に崩壊するから』
ライフは戒める様に目を細める。

『やめてくれ』
オトコは下を向き目を堅く閉じたまま言った。
目の前は漆黒で目を開けてもまた漆黒とわかっているからオトコは…

ぼくは記憶の中に白を探した。
どうか白を。
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