アハト
穏やかで日常で何も奪わない白を。
ぼくに返して。

『見覚えがあるんだろ』

ライフの言葉がオトコを黒の世界に引き戻す。

『君はぼくだ。』
『ぼくは君だ。』

『ぼくを守る為に君はすべての黒を背負ってあの白の箱に入った』
『君は黒以外のすべてをなくし、ぼくは黒以外のすべてを手にした』

『けど…』

ライフは悲しげな表情を見せた。

『君がすべてを背負ってもぼくが光を手に入れても、ぼくたちは虚無だ』
そしてキッとオトコを見る。
オトコは下を向き目を閉じ未だ白を探している。
ライフは決心した様に息をはいた。

『ぼくはつらさや悲しみをすべて君に架せ、君を隔離し、君はすべてを受け入れ、そして…』

『すべてをなくした』
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