アハト
オトコは崩れた橋の切れ目にアハトを抱いて座っていた。

手には少女の手の明るいぬくもりが残っている。

橋の切れ目にはありとあらゆる色が爆発しそうな程に犇めいていた。

オトコはそれに恐怖を感じ、しかしまた、愛おしくも感じた。

オトコは歩きだした。
腕にはアハトが心地良さそうに抱かれている。

オトコは泣いていた。
色をもたぬオトコからこぼれ落ちる翡翠の涙はあまりに美しかった。
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