いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。
***
それから数日後の休み時間。
黒崎くんが教室にいないのを確認してから、万葉ちゃんの背中をトントンと叩いた。
ん?と、眉毛をあげながらクルリと振り返った万葉ちゃんに、唐突に疑問をぶつける。
「席替えってまだしないのかな?」
「むむ?美優は席替えしたいの?こんな特等席なのに?」
窓側の一番後ろというここは、きっと誰もがうらやむ席だけど。
贅沢だなー、と続ける万葉ちゃんに苦笑いを返すあたしの願いは本当に切実なもの。
「黒板の字がちょっと見えにくくなっちゃって……」
「目、悪かったっけ?」
「最近視力が落ちたみたいなの」
当たり障りのないウソを並べ、それ以外の意図を見抜かれないように細心の注意を払う。
「それなら先生に言えば何とかしてくれるんじゃない?この席ならだれもが喜んで交換してくれるはずだよ」