いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。


「柏木さん、ありがとう。お礼にいいものをやろう」



ニコニコしながら机の中を漁る中島先生は、今年で退職予定のおじいちゃん先生。

でも目当てのものは見つからないようで、「ちょっと待っててくれ」と席を外す。



「……はい」



苦笑いしながらも、そんな人のいい中島先生をあたしは嫌いじゃない。


机の上には、お孫さんらしき人と一緒に映った写真などが沢山飾られていた。


周りにも目をやると、先生たちの机の上には知られざる私生活が溢れている。

普段はスーツしか着ない堅物な先生も、写真の様子から子供の前ではこんな可愛いTシャツを着るんだなぁ、とか。

マグカップ一つをとっても、性格やセンスが現れてて面白いなぁなんて見ていると、背後から深刻そうな声が聞こえてきた。



「……もう少しなんとかならんか……どいういうことなんだ……」



それは担任の岸本先生の声で。


反射的に振り返って……

そっと、顔を前に戻した。

< 105 / 389 >

この作品をシェア

pagetop