いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。




***



黒板には、大きく『自習』と書かれている。


窓ガラスを通して、日が燦々と差し込む穏やかな午後の5時間目。


おまけに食後。

眠りを誘うには絶好な条件がそろっているにも関わらず、誰もが真面目に指示された課題に取り組んでいるのは、ここが明應高校だからだろう。


丸まっている白い背中たちを見て、一体この中のどれだけの人が明應大学に進み、その中の何人が医師の道へ進むのかなぁ……なんてぼんやり考える。



……明應大学病院の医院長が、黒崎くんのお父さん。

……黒崎くんはその跡取り……超エリート……。



「…………」



右側に顔を振ったのは無意識だった。


黒崎くんはめずらしくきちんとプリントに向き合っている。


サラサラとプリントの上を走る薄い筆跡は、細長く統一感があってここから見てもとても綺麗。



……意外。

こんな繊細な文字を書くなんて。


頭の良さと筆跡はある程度比例するっていうし、紛れもなく黒崎くんは秀才なんだと思う。

< 119 / 389 >

この作品をシェア

pagetop