いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。
***
黒板には、大きく『自習』と書かれている。
窓ガラスを通して、日が燦々と差し込む穏やかな午後の5時間目。
おまけに食後。
眠りを誘うには絶好な条件がそろっているにも関わらず、誰もが真面目に指示された課題に取り組んでいるのは、ここが明應高校だからだろう。
丸まっている白い背中たちを見て、一体この中のどれだけの人が明應大学に進み、その中の何人が医師の道へ進むのかなぁ……なんてぼんやり考える。
……明應大学病院の医院長が、黒崎くんのお父さん。
……黒崎くんはその跡取り……超エリート……。
「…………」
右側に顔を振ったのは無意識だった。
黒崎くんはめずらしくきちんとプリントに向き合っている。
サラサラとプリントの上を走る薄い筆跡は、細長く統一感があってここから見てもとても綺麗。
……意外。
こんな繊細な文字を書くなんて。
頭の良さと筆跡はある程度比例するっていうし、紛れもなく黒崎くんは秀才なんだと思う。