いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。



今までは視界に入れるだけで胸が騒いでいたのに、今日のあたしの胸はどうしてか大人しい。


知っているのと知らないでは随分ちがうと思った。


1年前に首席だった彼が、最下位まで成績を落としてること。

人の気持ちなんて考えもしないと思っていた彼が、お兄さんを失っていた事実。


今までの嫌悪がスッと取り払われる気がするくらい黒崎くんが気になって……。


この感情に名前を付けるとしたら…………興味、かな。


そう、"興味"だ。

痛くて苦しい……"興味"。


そんな風にあたしの感情をかき乱す彼は、やっぱりひどい人かもしれないけど。

あたしが関わって知り得た人柄に、黒崎くんの本性は存在していないような気がする。


ほんとの黒崎くんは、どこにいるんだろう……。




つんつん、つんつん……。


そのとき、左腕に刺激を感じた。


反対側に首を振ると、和久井くんがシャーペンであたしの左腕をつついていた。



「さっきからうわの空、どうしたの?」

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