いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。
「……、」
その一言だけで圧倒されたのか、口元で小さく呼吸だけを続ける女の目には、みるみる涙が溜まっていく。
……めんどくせえ。
コクって来るのは女のくせにいつも俺が悪者扱いだ。
俺は理由を聞いてるだけだろ?
その前に、俺って人間がどんな奴かも知らないでコクってくる女にも責任があることわかってほしい。
勝手に美化すんなよ。
本当に女ってのは、なにも分かっちゃいない。
今日はなんだか気分もムシャクシャするからたたみ掛けてやった。
「それとも、明應大学病院の跡取りっていう肩書?」
言って、胸がズキンと鈍い音を立てた。
……言わなきゃ良かった。
目の前の女から、涙が一滴落ちたからじゃない。
……自分がこの肩書に傷ついていることを、再認識したからだ。
口にしなければ忘れられるそれを、こんなときに口にした自分へのバツなのかもな。