いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。
「どうだ、出来たか?」
「ああ、余裕余裕」
ハゲのおっさんとは砕けた雰囲気で話せる。
人柄がそうさせるのかもしれないが、こんな俺でさえここに来ると、なぜか心がほっとするんだ。
お節介だけど、そこには愛がこもっていて決してイヤじゃない。
……堅物な父さんの友人なんて信じられねえ。
「おー、さすがだな。これには実はもう一つの解き方があってな……」
ハゲのおっさんは俺の前に回り込むと、解説を始めた。
明應の教師たちは、頼んでもいないのに「黒崎君は優秀で立派な生徒です」と口をそろえて父さんに言ってくれているらしい。
どれだけサボっても、テストを白紙を出しても。その事実は父さんには伝わらない。
成績表を見ればオール5。
まるで黒崎柊哉という人間がべつにいるかのように、完璧な人物が作りあげられている。
だったら……本当の俺はどこにいるんだよ……。
どれだけ足掻いても結局は子供の遠吠え。
なにをしたって無駄なんだって、父さんの力を見せつけられているようで虚しくなるだけ。
父さんは……俺なんて見ちゃいない。
俺という体を通して……兄さんを見てんだ。