いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。



「どうだ、出来たか?」


「ああ、余裕余裕」



ハゲのおっさんとは砕けた雰囲気で話せる。

人柄がそうさせるのかもしれないが、こんな俺でさえここに来ると、なぜか心がほっとするんだ。

お節介だけど、そこには愛がこもっていて決してイヤじゃない。


……堅物な父さんの友人なんて信じられねえ。



「おー、さすがだな。これには実はもう一つの解き方があってな……」



ハゲのおっさんは俺の前に回り込むと、解説を始めた。



明應の教師たちは、頼んでもいないのに「黒崎君は優秀で立派な生徒です」と口をそろえて父さんに言ってくれているらしい。

どれだけサボっても、テストを白紙を出しても。その事実は父さんには伝わらない。

成績表を見ればオール5。

まるで黒崎柊哉という人間がべつにいるかのように、完璧な人物が作りあげられている。


だったら……本当の俺はどこにいるんだよ……。


どれだけ足掻いても結局は子供の遠吠え。

なにをしたって無駄なんだって、父さんの力を見せつけられているようで虚しくなるだけ。


父さんは……俺なんて見ちゃいない。


俺という体を通して……兄さんを見てんだ。


< 131 / 389 >

この作品をシェア

pagetop