いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。
『柊哉君、おこづかい足りているかい?』
それまで俺に見向きもしなかった親戚が、俺に媚を売った。
仲が良いとばかり思っていた親戚間で、病院の経営権争いをめぐり骨肉の争いが起きていたのを知ったのもその頃。
明應大学病院は俺のジイさんが創立者。
長男である父さんが跡を継いだが、兄さんが死んだことで父さんの弟の子供……つまりイトコが次の跡取り候補に名乗り出たのだ。
イトコは俺なんかよりずっと年上で、既に立派な医師。
『弟の所へ経営権は渡さない』
なんとしてもそれを阻止しようと躍起になる父さん。
つまり、骨肉の争いに14歳の俺が巻き込まれたんだ。
イトコは俺のことを「ガキのくせに」と言い全く相手にはしていなかった。
それでも肩身の狭かったあの家でやっと居場所を見つけられた気がして、俺は必死で頑張った。
父さんの期待に応えようと必死で。
父さんに嫌われたくない、見捨てられたくない、ただそれだけのために。