いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。



確信は持てなかったがどうやら図星。

みるみる表情が変わり目を泳がせる。



「そんな俺がどうしてこんな難題解けるのか、って?」



ひらり。

俺が解いたプリントを見せれば、見たこともない数式に目をしばたたかせる。



「誰かに言えば?」



実力云々はべつにして、テストの点数を元に成績がつくのなら、オール5をもらっている俺には明らかに不正が行われている。

俺が5をもらうことで内申点が減る生徒が出てくるわけで、そこはシビアな問題なはずだ。


いっそ、言ってくれていいとさえ思える。


仮面を剥いだ俺を知ったら、父さんはどうする……?


怖いくせにそんな賭けに出てみたい気持ちも心の片隅にはある。



「……言うつもりなんて、ないから……」



小さく開いた唇で、柏木はそう宣言した。


唇を振るわせながら返す柏木の口調を見れば、まだ誰に言っておらずこれからも言わないんだろうと覗える。

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