いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。



色づいてはいないものの、しっかり手入れされているのか艶めいた唇。

ここにキスしたのはいつだっけ……なんて考える余裕のある俺は、今度は視線を柏木の瞳へ移動させた。



「……」



グッと身を引く柏木。


……んなに警戒すんなよ……。

俺に弱みを握られたとでも思ってんのか?


ひっぱたかれても文句を言えないようなことをしたのに、逆に柏木はそれに怯えている。


その辺の女じゃあるまいし、あのキスで柏木が俺に落ちるとは夢にも思ってない。


だからここまで柏木が守り通すのは意外だった。


こうして今日俺とこんな風に距離を縮めていることにも、白鳥に対して罪悪感を抱いてるんだろうか。



「……本当に言わないから……心配しないで」



腕をグッと掴んだのは本能だった。


……"心配しないで"?



「言うなって頼んだ?言われるのを俺が恐れてるとでも?」


「だっ、だって……」


「そうやってすぐ人の顔色ばっかりうかがって楽しいのかよ」


「……」



柏木は唇を横にぎゅっと引くと、押し黙った。

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